穴を開けたコンドーム
俺の名前はタケシ。都内で普通に働く30代のサラリーマンだ。先日、仕事終わりに飲みに出かけたときのことだった。居酒屋で一人で飲んでいると、隣の席に座っていた女性が急に話しかけてきた。
「一人?よかったら一緒に飲まない?」
目を引くほど美人で、華やかな雰囲気の彼女に、俺は内心驚きながらも誘いに乗った。こんなことが自分に起こるなんて、正直思ってもいなかったからだ。彼女の名前はユキ。年齢は俺より少し若いくらいで、気さくに話してくれるその笑顔は、どこか安心感を与えてくれた。
「この後、もう少し付き合ってくれる?」
ユキがそう誘ってきたとき、俺は深く考えずに頷いてしまった。
次に連れて行かれたのは、小さなバーだった。そこでユキはさらに距離を縮めるように接してきて、俺もその雰囲気にのまれていった。しばらくすると、ユキが小さな声で囁いた。
「…この後、私の部屋に来る?」
不自然なくらいスムーズな展開に、少し警戒心が湧いたものの、酔いと高揚感に流され、俺はその誘いを受けることにした。ユキの部屋は都会のマンションの一室で、整然とした空間が広がっていた。だが、どこか無機質な印象があり、住人の気配が薄いように感じられた。
部屋に入ると、ユキはワインを取り出し、二人で乾杯をした。その後、彼女が小さな引き出しから取り出したものを見て、俺は一瞬驚いた。
「これ、使おうね。」
ユキが手にしていたのは、コンドームだった。普通なら気遣いとしてありがたいと思うところだが、妙にそのパッケージが古びているのが気になった。封を開けた中身も、どこか使い古しのように見え、俺は不安を感じた。
「これ、新品だよね?」
そう尋ねると、ユキは笑顔のままこう言った。
「もちろん。大丈夫、安心して。」
その言葉に押され、流されるように俺たちはその夜を過ごした。
翌朝、目が覚めた俺は、何か嫌な予感がしてユキの部屋を見渡した。彼女はまだ寝ているようだったが、部屋の隅に置かれたゴミ箱に目が留まった。そこには、昨夜使ったコンドームが捨てられていたが、妙なものが目に入った。
表面に、何か小さな穴が開いているように見えたのだ。慌てて確認すると、確かに針のようなもので開けたと思われる複数の穴があった。
「これは一体…?」
俺は恐怖を感じ、ユキを起こさないように部屋を後にした。
その日から、奇妙な出来事が続いた。知らない番号から頻繁に電話がかかってくるようになり、出ると無言のまま切れる。また、家のポストには「責任を取れ」というメモが投げ込まれるようになった。あの夜のユキの仕業だと思い、彼女に連絡を取ろうとしたが、番号は繋がらず、SNSのアカウントも消えていた。
ある日、会社を出た俺は、背後に視線を感じた。振り向くと、遠くにユキの姿があった。だが、次の瞬間、彼女は路地の陰に消えた。
「俺を追っているのか…?」
不安が募る中、俺の携帯に一通のメールが届いた。送信元は不明で、内容はただ一言。
「次はちゃんと逃がさないから。」
それ以来、俺は外出するのが怖くなった。部屋の中でもどこかにユキが潜んでいるような気配を感じ、安らぐことができない。彼女は本当に何者だったのか?なぜ俺をターゲットにしたのか?
今でも、夜になると窓の外から何かが見ている気がする。そしてそのたびに、ユキの笑顔が脳裏に浮かぶ。
「安心して。」
あの言葉の裏に隠されていた本当の意味は、今もわからないままだ。
















