地方アイドルの「彼女」

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俺は、アイドルオタク。推しのためなら、地方でも全国どこでも足を運ぶ覚悟だ。数年前、ある地方都市で活躍する地下アイドルに出会った。地方にしては珍しい、洗練された見た目と冷ややかな笑顔が魅力的で、最初は彼女の不思議な魅力に完全に魅了されていた。だけど、だんだんと何かが違うと思い始めた。

そのアイドルは、イベント会場やファンの集まるSNSでもどこか浮いている存在だった。彼女のツイートにはなぜか無機質な雰囲気が漂っていて、感情のない文章が並んでいた。リアルイベントでの彼女も、普通のアイドルのような自然な笑顔ではなく、どこか目が虚ろな感じがした。視線を合わせても、まるで見透かされているような感覚があって、言葉では言い表せない気味の悪さが残った。

不可解な行動

ある日、彼女が出演する小さなライブハウスに行った。狭いステージで、他のメンバーと一緒にパフォーマンスをしていたが、彼女だけがどこか異質な存在感を放っていた。動きが微妙に人間離れしているというか、少しでも目を離すとその動作のリズムが狂って見えた。

さらに奇妙だったのは、ライブの最中に観客の誰かが声援を上げると、突然目線をその人に固定し、無表情でじっと見つめ続けることがあるということだ。まるで観客全員を一人ひとり調べるように、視線が移り変わる様子があった。まるでファンを「対象」として見ているようで、彼女の視線を感じるたびに心臓が凍りつくような感覚を味わった。

忘れられない会話

その後、特典会で彼女と会話する機会があった。握手を交わし、名前を告げると、彼女は微かに笑ったが、その笑顔は一瞬のことで、すぐに表情が消えた。「俺の名前、覚えてくれていますか?」と尋ねたが、彼女は何も言わず、ただ目をじっと見つめていた。

その時、彼女の瞳に映った自分の姿を見て、言葉にできない恐怖を感じた。彼女の瞳に映る俺の顔が、どこか歪んでいた。自分の顔に、目元や口元に影が落ちて、不気味な笑みを浮かべているように見えた。その場は気まずさに耐えきれずすぐにその場を立ち去ったが、帰り道で心の中に異様な感覚が残り続けた。

奇妙な噂

その後も、彼女に関する噂がSNSで広がり始めた。「ステージの上で誰かを見つめて笑う」「ファンの顔を全て覚えているかのように名前を当てる」など、どれも不気味な話だった。さらに、彼女がとあるファンにだけ向かって何かを囁いていたという話があり、そのファンは数日後にライブに姿を見せなくなった。あれ以来、彼女のファンの間では「彼女に目をつけられると、不幸が訪れる」という噂が立ち、特に熱心なファンほど距離を置くようになっていった。

俺はその噂に気味悪さを感じながらも、なぜか彼女を忘れられず、再びライブへと足を運んだ。しかし、ライブの最中に彼女の視線が自分に向けられた瞬間、背筋が凍った。まるで何かを訴えかけるように見つめられ、動けなくなってしまった。気づけば他のファンの声援も遠くに感じ、ただ彼女の目だけがこちらを捕らえ、逃れられないような感覚に囚われていた。

忘れられない最後の体験

それからしばらくして、彼女が地方を去ることが発表された。理由は明かされなかったが、ファンの間では彼女の「異質な行動」が原因だという噂が広がっていた。最後のライブには行くつもりはなかったが、なぜか「行かなければならない」という衝動に駆られてしまい、結局足を運んだ。

ライブの終わりに彼女がステージ上で観客に一礼すると、視線をこちらに向け、口元にだけ笑みを浮かべた。そして、口パクで何かを言ったが、その言葉ははっきりとは聞き取れなかった。ただ、その瞬間にふと頭に「お前も来るか?」という言葉が浮かんだ気がして、背筋が凍りついた。

ライブ後、帰り道でその言葉の意味を考えたが、今でも結論は出ていない。ただ一つ言えるのは、彼女のライブに行ったあの夜から、どこか自分の中で「なにか」が変わってしまった気がすることだ。