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広島県のとある新興住宅地の囁き

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広島県のとある山間に、新しく開発された住宅地があった。広大な緑地を切り拓いて整備されたそのエリアは、静かな環境ときれいな住宅街が魅力で、都会から離れたい家族層を中心に人気を集めていた。だが、入居が始まって間もなく、周囲には奇妙な噂が囁かれ始めた。

「夜になると、空き家から物音が聞こえる」
入居した人々の間でよく聞かれるのは、深夜の物音だった。誰もいないはずの家から、足音や物を引きずるような音が聞こえるのだ。特に、一区画だけ入居者がほとんどいないエリアがあり、そこを通りがかると、何も見えないのに背筋がぞくっとするような感覚に襲われるのだという。

ある一家が引っ越してきた日のこと。夜遅くまで荷物整理をしていた母親が、ふと二階に足音が聞こえるのに気づいた。「あれ?まだ子供たちが起きているのかしら…」そう思って階段を上がろうとした瞬間、足音がピタッと止んだ。部屋を確認してみると、二階には誰もいない。息をひそめていたかのように、ただ静寂が広がっていた。

行方不明者の噂
住宅地に越してきた住人の一人が、近所の住人と話をしていると、気になることを耳にした。ある一家がこの地域に引っ越してきた後、家族の一人が失踪したというのだ。その話によると、その人は夜中に自分の部屋で寝ていたが、朝になると跡形もなく消えていた。家族は警察に届け出を出したものの、手がかりは一つも見つからなかった。

古い祠と恨み
さらに調べると、この地は昔から「呪われた土地」とされていたことがわかった。地元の住民の話では、かつてこの場所には小さな村があり、そこには神社も祀られていたが、開発のためにすべて取り壊されてしまったという。神社の祠だけは残されていたが、今は草むらに埋もれてほとんど見えなくなっているらしい。新興住宅地に住む住人の中には、その祠を見かけたという人もおり、その祠に触れた途端、異常な寒気を感じたという者もいる。

ある夜、無人の家からまた物音が響く。住人たちは夜明けとともにその家を見に行くが、そこには誰もいない。それからというもの、その住宅地の夜はさらに静まり返り、住人たちはなるべく外には出ないようにしているという。

古い怨念の声
噂はどんどん広がり、ついには周辺地域でも知られるようになった。「新興住宅地の中で、誰も近寄らない場所がある」「夜中に祠のそばを通ると、何かが背後に立っているような気配を感じる」。引っ越してきた住人たちは、口を揃えて言う。「ここには何かがいる…」。誰もその「何か」を見たことはないが、確実に“何か”が潜んでいると感じていた。