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異世界に迷い込んだサラリーマン

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ある日、ヒロトは、いつものように自宅から通勤電車に乗って会社へ向かっていた。彼は普通のサラリーマンで、特に変わったところもない。いつものルーティン、いつもの電車、いつもの人々。何の変哲もない平日の朝だった。

電車が目的の駅に着いた。ヒロトは降りて改札を通り、会社に向かって歩き出す。今日は特に急ぎの仕事もないため、ヒロトは気楽な気分で通勤していた。しかし、ふとした瞬間、違和感を感じた。周囲がいつもより静かだ。普通、駅前は人が多く、車の音や人々の会話が聞こえるはずなのに、その日は何故か異様に静まり返っていた。

「…?」

ヒロトは足を止め、周囲を見渡す。だが、通りには誰もいない。朝の通勤時間にこんなことがあるだろうか。ヒロトは自分の腕時計を確認したが、時間はいつもと変わらず、時計が狂っている様子もない。しばらくその場に立ち尽くしていたが、周囲には一人の人影も見えない。これはおかしい、と彼は思った。

会社へ向かう道を進みながらも、ヒロトは焦りを感じ始める。いつも賑やかなオフィス街なのに、まるでゴーストタウンのように人がいない。建物も、車も、すべてがその場にあるのに、誰もいない。

やっと会社に到着したヒロトは、急いでエレベーターに乗り込みオフィスへ向かった。オフィスのドアを開けると、驚いたことに中は完全に空っぽだった。いつも朝早くから働いている同僚たちの姿がどこにも見当たらない。机もコンピュータもそのままなのに、まるで誰もここに来ていないかのように静まり返っている。

「みんなどこに行ったんだ…?」

ヒロトは不安に駆られながら、自分のデスクへと歩いた。机の上には普段通りの書類が置かれており、何も異常はない。彼は携帯電話を取り出し、誰かに連絡を取ろうとしたが、電波は全く入っていない。パソコンを起動してみても、インターネットに接続できない。

「何だこれは…どうなってるんだ…」

ヒロトは不安を押さえきれず、オフィスを出て会社の外へ戻る。再び街を見渡しても、やはり誰もいない。全てが現実離れしていた。そうこうしているうちに、彼の携帯電話が突然鳴り出した。着信音が響き渡る中、画面を確認すると、見覚えのない番号が表示されている。

「誰だ…?」

ヒロトは不安を抱きながらも、電話に出た。

「おい、なぜこんなところにいるんだ!」突然、電話の向こうから怒鳴り声が聞こえた。年配の男性の声だった。その声は強い怒りを含んでいたが、ヒロトにはその理由が全く分からない。

「え?どういう意味ですか?あなたは誰なんですか?」

しかし、男性は答えず、ただ「こんなところにいるべきじゃない」と繰り返すばかりだった。

「何がどうなってるんですか?周りに誰もいないんです…何が起きてるんですか?」ヒロトが質問すると、男性の声は急に冷たくなり、囁くように言った。

「お前、帰れ。今すぐここから出ろ。さもなければ、お前も…」

そこで電話は切れた。ヒロトはしばらくの間、立ち尽くしていた。意味が分からない。何が起きているのか、なぜこんなことになっているのか。頭の中は混乱していたが、彼はその場から逃げ出すことに決めた。

「ここを出なければ…」

そう決意し、再び駅へと戻ろうとした。だが、その道中、背後から誰かの視線を感じた。振り返ると、遠くのビルの陰から、こちらをじっと見つめる人影があった。その人物はまるで彼を監視しているかのように、動かずに立っていた。ヒロトはその存在にゾッとし、早足で駅へ向かう。

駅にたどり着いたヒロトは、改札を通り電車に乗り込んだ。やっと日常に戻れると思ったが、電車の中もまた異様な空気が漂っていた。乗客は数人しかおらず、全員が黙り込んで下を向いている。

「何なんだ…何が起こっているんだ…」

電車は静かに走り出したが、窓の外に広がる風景はどこかおかしい。いつもの駅とは違う景色が広がり、見知らぬ場所を通過していた。ヒロトは不安に押し潰されそうになりながらも、ただひたすら自宅の最寄り駅に戻ることを願っていた。

しかし、電車が次に止まった駅は、彼の知らない場所だった。見慣れない駅名、薄暗いホーム。そして、車内アナウンスが一言だけ流れた。

「ここで降りろ。」

ヒロトはその言葉に従わざるを得なかった。電車を降り、誰もいないホームに立つと、再び携帯電話が鳴り始めた。恐る恐る電話に出ると、またあの声が聞こえた。

「お前は戻れない。もう遅い。」

その瞬間、全てが暗転し、ヒロトは意識を失った。

彼が気がついた時、元の世界に戻っていた。いつもの駅、いつもの人々。しかし、ヒロトは二度とあの異世界の記憶を忘れることはできなかった。そして、その声が、時折夢の中で彼を咎めるように響き続けるのだった。