実習中に起こした「ちょっとした悪ふざけ」
これ、たぶんもう誰も知らないんじゃないかと思うんだけど、俺が医学生だったころに実際に起こった話。ネットに出すのはこれが初めてだから、関係者にはバレないようにちょっと設定を変えて書くけど、まあ聞いてほしい。実習中に起こった「ちょっとした悪ふざけ」だったんだけど、あれ以来、誰もその話題に触れなくなった。俺も大学辞めて、すっかり医療の道から外れてしまったし。
俺が在学してた大学は、名門とかそんなのじゃないけど、そこそこの規模の医学部があって、解剖実習も普通に行われてた。学生たちは、最初はビビってたけど、だんだんと慣れてくるもんで、いつしか笑い話や冗談も飛び交うようになる。今考えたら、それが最初の警告だったのかもしれない。医者を目指す学生たちが、生と死に向き合う厳粛な時間を忘れ、解剖実習というものを軽んじていた。
その年の解剖実習班に入ったメンバーは10人くらいで、俺たちは実習が始まるとすぐに献体と向き合い、各自の担当部分を決められた。俺は担当部位が頭部だったんだけど、ある日、その解剖室で起きた悪ふざけがすべての始まりだった。
友人の一人、Tって奴がいた。彼はいつも冗談を言って教室を盛り上げるタイプだったんだけど、解剖の時も例外じゃなかった。俺たちが解剖に集中している中、Tがふざけて「これ、俺の人生最大のいたずらだ!」とか言いながら、献体の切除された手を持ち出してきたんだ。手の指を使って、ピースサインを作らせたりして、周りのみんなを笑わせてた。
T「おい、見てくれ!これ、献体さんもピースしてるぞ!」
最初はみんな笑ってたよ。でも、だんだんとその悪ふざけがエスカレートしていった。
ある日、Tが実習室の壁にその切除した手をピタッと貼り付けたんだ。で、壁に向かって「おい、壁に手ありだぜ!」って言ったんだよ。壁に耳ありの冗談をもじったってことなんだろうけど、これが後々問題になるとは思いもしなかった。
俺たちは笑って、写真まで撮ったんだ。その時は本当に面白かった。いや、今考えると自分たちの感覚が完全に麻痺していたんだろうな。解剖実習が進むにつれて、俺たちは次第にその不謹慎さに気づかなくなっていった。そう、Tの「手のジョーク」も、単なる軽い冗談で済むと思ってたんだ。
だけど、その夜、俺は奇妙な夢を見た。解剖室の壁に貼り付けられた手が、少しずつ動いているんだ。しかもその手が壁を叩きながら、「出してくれ、出してくれ」って声にならない叫びを上げてる。俺はその夢から冷や汗をかいて目覚めたんだけど、朝になってもその不気味な映像が頭から離れなかった。
次の日、Tにそのことを話すと、彼も昨夜奇妙な夢を見たと言い出した。
T「俺もさ、夢の中で壁に貼り付けた手が動き出してさ。まるで何かを訴えてるみたいだった。まあ、ただの夢だろうけど」
でも、実習が進むにつれて、俺たちはその悪ふざけが単なる夢や笑い事じゃないと感じ始めた。まず、Tの体調が急激に悪くなり始めたんだ。最初はただの風邪かと思ってたけど、日に日に悪化していった。何度病院に行っても原因不明。医学生の俺たちが見ても、理解不能な症状だった。
そしてある夜、俺たちが帰宅した後、大学に奇妙な電話が入った。警備員からの報告で、誰もいないはずの解剖室から「壁を叩く音」が聞こえるって言うんだよ。俺たちは恐怖に包まれた。Tの悪ふざけが引き起こした呪いなんじゃないかって、みんなが思い始めたんだ。
その翌日、Tが大学に来なくなった。俺たちは心配になって、Tのアパートを訪ねたんだけど、部屋には誰もいなかった。彼が行方不明になって、警察にも捜索願が出されたけど、結局何の手がかりもつかめなかったんだ。
数週間が経ち、Tの行方不明事件は徐々に忘れられていった。けれど、俺は忘れられなかった。あの「壁に手あり」の冗談から、何かおかしなことが始まった気がしてならなかったんだ。
そして、ある日、俺は大学の解剖室でふと壁を見上げた。その壁には、あの日Tが手を貼り付けた場所がある。俺はその場所をじっと見ていると、突然ぞっとするような寒気が走った。そこにはもう何もないはずだったんだが、まるで手が今でもそこにあるかのように、薄っすらと跡が残っていたんだ。
俺はその瞬間、足が動かなくなって、その場に崩れ落ちた。心の中で、「Tがまだここにいるんじゃないか」と思ったんだ。
それ以来、俺は解剖実習に参加するのをやめた。大学も退学した。あの「手」に関わった瞬間から、俺の人生は狂い始めたんだ。
最後にTが見つかったという話は聞いていない。彼がどこに行ったのかも、何が起きたのかも分からない。ただ一つだけ確かなのは、あの悪ふざけがすべての始まりだったということ。
俺がここに書き込む理由は、もしお前らが同じような実習をすることになった時、絶対にふざけるなってことだ。解剖実習は、命に向き合う厳粛な時間なんだ。あの時の俺たちのように、軽んじては絶対にいけない。
Tがどこかで読んでいたら、すまん。本当にすまん。あれは冗談で済まなかった。
















