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名前不明の駅での出来事

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あれは本当に何だったんだろう。もう何年も前の話だが、いまだに頭から離れない。今こうして書いているけど、自分でも信じられない体験だった。人に話したところで信じてもらえるわけでもないし、ずっと心の中に閉まっていた。だけど、最近ネットで似たような話を見かけて、これは俺も記録しておくべきなんじゃないかと思ったんだ。

その日は、俺が久しぶりに仕事帰りに電車で出かけたときのことだった。いつもは車通勤なんだけど、その日は急な打ち合わせが入って、帰りは電車で帰ることになった。たまには電車に揺られて、のんびり帰るのも悪くないな、なんて思っていたんだ。

電車はどんどん郊外へ向かって進んでいく。だんだんと乗客も少なくなってきて、終点に近づくにつれて、ほぼ俺一人だけになってしまった。乗り換え駅まであと少しというところで、何か違和感を感じた。駅のアナウンスが妙に聞き取りにくくて、外の景色もなんだかぼんやりしていた。

次の駅で降りる予定だったんだが、そのとき急に車内アナウンスが「次は〇〇駅、〇〇駅です」と言ったんだ。ん?〇〇駅? 聞き覚えのない名前だなと思った。俺が乗った路線にそんな駅は無いはずなんだが、確かにそうアナウンスされた。思わず窓の外を見たけど、周囲は真っ暗で何も見えなかった。これは変だと思いつつも、電車はそのまま減速して駅に到着した。

駅は無人駅だった。というか、無人駅どころか、駅全体がひどく荒れていた。ホームには雑草が生い茂っていて、ベンチも錆びついてボロボロだった。まるで長い間使われていない廃駅のように見えた。

俺は降りるかどうか一瞬迷ったけど、どうにも不安な気持ちが膨らんできて、電車の中にいることが逆に怖くなってしまった。それで、思わず降りてしまったんだ。

駅には誰もいない。静まり返っていて、電車の音だけが響いていた。俺が降りた瞬間、扉が閉まって、電車はすぐに走り去ってしまった。後に残されたのは、真っ暗なホームと俺だけ。

とりあえずスマホで現在地を確認しようとしたけど、なぜか電波が一切入らない。近くに自販機もないし、照明もほとんどついていない。これはまずい、完全に迷ってしまったと思い始めた。

ホームを歩いていると、奥に古びた駅舎があった。駅舎に入ってみたけど、内部も酷い荒れようで、埃が積もり、蜘蛛の巣が張っていた。駅名の看板を探してみたけど、どこにもそれらしきものは見当たらなかった。

「あれ? どこだここ…」

さすがに焦ってきた。電車の本数が少ない路線だったから、次の電車がいつ来るかもわからないし、この駅が一体どこなのかすら不明だ。誰かに助けを求めようにも、人影一つ見当たらない。仕方なく駅の外に出てみた。

外に出ると、さらに異様な光景が広がっていた。周りはまるでゴーストタウンのように寂れていて、家々は朽ち果てていた。窓ガラスは割れていて、ドアは錆びついていたり、完全に倒壊していたりした。これは何かの夢か悪い冗談か? 俺は、頭の中でそんな考えがぐるぐると回った。

駅前には一つだけ、かろうじて形を保っている商店があった。どうにかしてこの場所を脱出するために、その店に入ることにした。店のドアを開けると、そこには年老いた店主が一人、カウンターに座っていた。

「すみません、この駅はどこですか? 次の電車はいつ来るんでしょうか?」

俺は少し動揺しながらも、なんとか質問した。店主はしばらく黙ったまま俺を見つめた後、ゆっくりと口を開いた。

「この駅には、電車はもう来ませんよ。ずっと昔に廃止されましたからね…」

「え、でもさっき電車でここに来たんですけど…」

「おかしいですね。ここに電車が来るはずはないんですよ…」

俺は困惑した。このおじいさん、何かの冗談を言っているのか? それとも、本当にこの駅は電車が来ないのか? でも、実際に俺は電車でここに来たんだ。どういうことだ?

さらにおかしなことに、店内の時計は全く動いていなかった。壁にかかっている古いカレンダーも、明らかに何十年も前のものだった。どうしてこんな場所が今でも残っているんだ?

「すみません、タクシーとか呼べますか?」

俺はさらに尋ねた。だが、店主は首を振るだけだった。

「ここには、誰も来ませんよ。タクシーも呼べない。君も、ここに来たのが間違いだったのかもしれませんね…」

俺は背筋が凍りついた。これはもう現実の世界ではないのか? それとも、俺が知らないうちに何か別の次元に迷い込んでしまったのか? とにかくこの場所から早く逃げ出したいと思い、店を飛び出して駅に戻ることにした。

駅に戻ってみると、先ほどの電車はすでにどこかに消え去っていて、ホームには誰もいなかった。再びスマホを確認してみたが、依然として電波は入らない。

「どうすれば…」

途方に暮れながら、駅のベンチに座り込んだ。時間がどれくらい経ったのかもわからない。辺りはますます暗くなり、静寂だけが広がっていた。

そのとき、突然遠くから足音が聞こえた。駅のホームに人が現れたのだ。薄暗い中でその姿ははっきりとは見えなかったが、どうやら駅の反対側からこちらに向かって歩いてくるようだった。

「誰だ…?」

俺は恐る恐る声をかけてみた。しかし、その人影は何も言わず、ただゆっくりとこちらに近づいてきた。そして、近づくにつれてその姿が徐々に明らかになった。

それは、まるで駅の構内に溶け込むかのような幽霊のような存在だった。いや、実際に幽霊だったかもしれない。全身が白くぼやけていて、顔も表情もよくわからなかった。ただ、俺に向かって手を伸ばしているようだった。

「おい、待て!」

俺は叫びながら駅を飛び出し、全力で走った。周りは真っ暗で道もわからなかったが、とにかくその場から逃げなければならないという衝動だけが俺を駆り立てた。

そして、気がつくと、目の前に再びあの店があった。店の中には、先ほどの店主がまだ座っていた。

「もう帰れないんだよ、君は…」

俺はその言葉を聞いた瞬間、意識が遠のいていくのを感じた。

次に目を覚ましたのは、いつもの自分の部屋のベッドだった。あれが夢だったのか、それとも現実だったのか、いまだにわからない。だが、一つだけ確かなのは、その駅が本当に存在するのかどうか、今でもわからないままだということだ。