ふたりかくれんぼ
少し前、俺は「ひとりかくれんぼ」っていう怪談が流行ってた頃に、自分でもっと怖い遊びを考えてやってみようと思ったんだ。仲間内では、そういう怖い話とか、実際にやってみるのがちょっとしたブームで、俺も流れに乗ってたってわけさ。
だけど、ひとりかくれんぼってのは、俺にはどうも物足りない。ひとりで怖がっても、なんかつまらないじゃん?それで俺は考えた。ひとりじゃなくて「ふたりかくれんぼ」ならどうだろうって。だれかと一緒にやったほうが、リアルに怖いし、何かが起きたらすぐに共有できる。そう思って、親友のタケルを誘ったんだ。
タケルは俺と違って慎重派だけど、俺がいつも無理やり引っ張っていくタイプだから、今回も「仕方ないな」って感じで付き合ってくれた。
夜の11時ごろ、俺たちは近所の廃墟になった学校へと向かった。使われなくなったのは数年前らしいけど、校舎はそのまま残されていて、廃墟の雰囲気が漂ってた。特に体育館は天井が崩れかけてるし、ガラスも割れてて、心底不気味だった。
「おい、ほんとにやるのか?」
タケルが不安げに言った。
「もちろんだろ。どうせ何も起きないさ。俺たちはただ隠れてるだけなんだから。」
俺はタケルを笑ってからかっていたけど、心のどこかでちょっとだけ不安も感じていた。でも、もう引き返せない。
俺たちは決めていたルールをおさらいした。ふたりかくれんぼのルールはシンプルだ。まず、廃墟内でお互い隠れる場所を決める。次に、スマホを使って相手を探し合う。相手を見つけるまでお互いの声を出さず、ひたすら隠れている。もし見つけられなければ、次のラウンドでまた隠れ直す。深夜0時を過ぎてもどちらかが見つからなければ、その時点でゲーム終了ってことにした。
俺は校舎の裏手にある空き教室に隠れることにした。教室は半分壊れていて、ガラスが散らばってるのが見えた。窓からはかすかに月の光が差し込んでいて、室内は不気味な静寂が漂っていた。タケルは体育館のどこかに隠れるって言ってたが、そこは広いし隠れる場所も多い。俺は早く見つけ出して、タケルを驚かせようと考えていた。
ゲームが始まった。
しばらくして、体育館へ向かった俺は、スマホのライトを頼りにタケルを探してた。体育館の中は広すぎて、一歩進むごとに自分の足音が反響していた。タケルはどこに隠れてるんだ?と思いながらも、俺は少しずつ前進していった。
「タケル、いるのか?」
何の反応もない。
5分、10分と時間が経ち、俺は少し焦り始めていた。タケルが本気で隠れてるなら、ここまで見つからないのもおかしくないが、それにしても不気味だった。何かが違う。俺はそう感じ始めていた。
ふと、体育館の奥にある物置部屋から音がした。カタッという音が、静かな空間に響く。それまで静まり返っていた空気が、一瞬ざわついたような感じがした。
「タケル?おい、ふざけるなよ。」
俺は少しイラつきながら、物置部屋の扉を開けた。中は暗く、何も見えない。スマホのライトを向けても、タケルの姿はどこにもない。ただ古い棚や用具が無造作に置かれているだけだった。
でも、奇妙なことに、タケルのスマホがその棚の上に置かれていたんだ。まるで故意にそこに置かれたかのように。俺はその場に立ち尽くした。
「…なんで?」
俺は手を伸ばしてスマホを手に取った。画面には何も表示されていない。LINEも通知もない。
タケルがいない。
その時、背後で何かが動く音がした。俺は振り返ったが、誰もいない。まさかタケルが俺を驚かそうとしてるのか?
俺「おい、いい加減出てこいよ!」
答えはない。ただ、その瞬間、冷たい風が体育館の中を駆け抜けた。
俺は怖くなり、タケルのスマホを持ったまま廃墟を出ようと決心した。でもその時、LINEの通知音が鳴った。
『探してる?』と、画面に表示された。
タケルのスマホに送られたメッセージだった。送信者は俺の番号だ。しかし、俺はそんなメッセージを送った覚えがない。
俺は振り向いて、その瞬間、目の前に真っ黒な影が立っていた。それはタケルではなかった。背が高く、何も見えない暗いシルエットが、静かに俺を見つめていたんだ。
その時、廃墟全体が静まり返り、時間が止まったかのように感じた。俺はその場から動けなくなり、影は一歩、また一歩と近づいてきた。足音が響き、俺は意識が遠のきそうになった。
「ふたりかくれんぼ、楽しかったか?」と、どこからともなく声が聞こえた。
気づいた時には、俺は廃墟の外にいた。タケルはどこにもいなかった。俺たちがやった「ふたりかくれんぼ」は、たぶん誰も勝てないゲームだったんだと思う。
あれ以来、タケルの姿は見つかっていない。警察にも行ったが、誰も俺の話を信じてくれない。