一輪のカサブランカ
ある日、小さな子供が母親と一緒に買い物に出かけた。通りを歩いていると、母親がふと立ち止まり、花屋の前に飾られた花瓶を見つめてこう言った。
母親「この花瓶、うちにあったら素敵ね」
その瞬間、子供は決意した。お母さんの誕生日にこの花瓶を買って、プレゼントしようと。だが、子供にとってその花瓶は高すぎた。そこで、小遣いを毎日少しずつ貯めることに決めた。
1か月が経ち、小銭は少しずつたまってきた。だが、部屋に小銭を隠していると、かさばってしまうことに気づいた。そこで子供は、家の近くにある誰も寄り付かない公園の脇にある大きな木の下に、小さな穴を掘って貯めたお金をそこに隠すことにした。
その後も、花瓶が売れてしまわないか心配で、たまに花屋さんを見に行った。
ある日、店の主人が子供に声をかけた。
花屋の主人「たまに見に来るけど、何を見てるんだい?」
子供「この花瓶が欲しいんだ。でも、まだ買えないの。お母さんの誕生日にプレゼントするためにお金を貯めてるんだ」
主人「それは素敵だ。でも、君には少し高いんじゃないかい?」
子供「大丈夫だよ。少しずつ貯めてるから!」
それから何か月か経ち、子供は再び店を訪れた。
主人「お金は貯まりそうかい?」
子供「うん、もう少しだよ!お母さんの誕生日は来月なんだ」
花屋の主人は微笑んで「楽しみにしているよ」と言った。
そして、ついにその日が来た。お母さんの誕生日が数日後に迫り、子供は今まで貯めていたお金を持って花屋に行くつもりだった。だが、公園の木の下を掘っても、何も出てこない。あれだけ貯めていたお金が、すべてなくなっていた。
子供は途方に暮れ、公園で泣き叫んだ。それでも、どうすることもできず、ふらふらと花屋の前を通り過ぎようとしたとき、店の主人が声をかけた。
主人「どうしたんだい?お金がなくなってしまったのかい?」
子供は泣きながらうなずいた。
主人「おや、花瓶はいらないのかい?せっかくだから、これをお母さんに」
そう言って、店の主人は一輪のカサブランカの花を手渡した。子供はそれを持ち帰り、お母さんにプレゼントした。
お母さんはとても喜んだが、子供の心には一つの疑問が残った。今まで一生懸命貯めていたお金は、いったいどこに消えてしまったのだろうか?