○○県の年越しトンネル
地方に住んでいる人なら、トンネルにまつわる怖い話を一度は耳にしたことがあるかもしれません。よくある話では、「トンネルの中でクラクションを3回鳴らすと霊が出る」とか、「トンネルの中で振り返ると後ろに誰かが立っている」といったものです。しかし、私の地元で噂されているトンネルの話は、そんなよくある怪談とは少し違います。
このトンネル、地元では「年越しトンネル」と呼ばれています。実際には名前もない、ただの古びたトンネルです。しかし、噂によると、このトンネルに12月31日の夜に入って、1月1日に反対側から出ると異世界に繋がってしまうというのです。
一見、ただの都市伝説か迷信のように聞こえますが、地元ではこのトンネルを使う人はほとんどいません。特に年末年始に、このトンネルを使うことは絶対に避けるべきだと言われています。
Aという青年も、最初はこの話を信じていませんでした。
「こんなの、ただの噂だろう?試しに行ってみようぜ!」
そんな軽いノリでAは、12月31日にトンネルへ向かうことにしました。彼は車を持っておらず、自転車でトンネルに行くことを計画していました。年末の夜は寒く、少し雪もちらついていましたが、Aは一人で出かけていきました。
トンネルの入り口に到着したAは、少し不安な気持ちを抱えながらも、自転車を漕いでトンネルに入りました。トンネルの中はひんやりとしていて、息が白く浮かび上がります。電灯も少なく、長いトンネルを抜けるまでずっと真っ暗な中を進んでいかなければなりません。
Aは特に恐怖心を抱かず、ただ年越しを迎えるまでにトンネルを抜けようと考えていました。しかし、トンネルの中を進んでいると、急に体が重くなり、ペダルが重く感じられるようになりました。
「なんだこれ…?」
まるで時間がゆっくりと進んでいるような感覚に襲われ、異様な雰囲気が漂ってきたのです。それでもAはなんとか進み続け、ついにトンネルの出口が見えました。
Aがトンネルの反対側に出たとき、すでに新年を迎えていました。
しかし、そこに広がる光景は、彼の知っている世界ではありませんでした。トンネルの向こう側は、見覚えのない異様な風景が広がっていたのです。木々はすべて灰色で、空には何もない。ただ、どこかの国旗のような奇妙な色合いの雲が浮かんでいるだけでした。
Aはあわてて元のトンネルに戻ろうとしましたが、振り返るとトンネルは消えていました。元の世界に戻る方法がなくなったAは、異世界で一人、迷い続けているのかもしれません。
この話を信じる地元の人は、皆口を揃えてこう言います。
「あのトンネルは、本当に気をつけた方がいい。年越しの時期だけは、絶対に使ってはいけない」
Aは、今でも年越しの夜、この異世界でさまよい続けているかもしれません。そして、そのトンネルは未だに存在し、誰かがまた挑戦しようとしているのです。