見知らぬ花嫁の予約

短編怪談,都市伝説キャンセル,不思議な体験,幽霊,式場,怖い話,恐怖体験,毎年,結婚式,謎の花嫁,都市伝説

ある日、若い女性が一人で結婚式場に下見にやってきました。彼女は相手が仕事で忙しいと言い、一人で来たのだと説明します。礼儀正しく、落ち着いた雰囲気の彼女は、食事を試食し、ドレスを試着し、終始嬉しそうに微笑んでいました。

「とても素敵な場所ですね。ここで式を挙げたいです」と彼女は言い、式場のスタッフに予約を申し込みます。

その時、予約表に名前や住所などを書いてもらうことになります。彼女は自分の名前をスラスラと書きますが、相手の欄に来ると、急に手が止まりました。何度かペンを動かそうとしますが、結局は名前しか書けませんでした。

「相手の情報がまだ分からない感じでしょうか?」とスタッフが不思議に思って声をかけました。

彼女は少し戸惑ったように微笑み、「今度ちゃんと書きますね」とだけ答え、予約金を支払ってその場を去りました。

式の準備は進んでいくはずでしたが、式が近づいた頃、突然キャンセルの連絡が入ります。「急な事情で…」という短い説明だけが伝えられ、スタッフは残念に思いつつも仕方ないと受け入れました。

それからしばらく経った頃、再び彼女が式場を訪れました。今度は少し時間が経っているので、別のスタッフが対応しましたが、状況はまったく同じでした。彼女は再び予約を申し込み、同じように相手の情報が曖昧なままでした。そして、またキャンセルの連絡が入ります。

その翌年も、また翌年も、同じ女性が現れ、同じことを繰り返していきます。スタッフの中では、彼女の訪問が恒例行事のようになり、誰もその理由を深く追求しなくなりました。

しかし、ある年、新人スタッフが不思議に思い、過去の記録を調べました。そこには10年前から毎年、同じ女性の名前が何度も現れており、そのたびに同じようにキャンセルされていることが分かりました。彼女の姿は若いままで、名前も住所も変わることはありませんでした。

「こんなに長い間、同じことを続けているなんて……いったい何者なんだろう?」

その女性は、今も予約をしてはキャンセルを繰り返す、謎の花嫁として記録に残っています。