ヒッチハイクで出会った女性

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夏休みを迎えた俺は、九州を出発して、北海道までヒッチハイクで旅をするという無謀な計画を立てた。これが自分にとっての挑戦だと思っていたし、自由な旅をしてみたかった。九州から北海道まで、距離にして約2000キロ。どう考えても簡単な旅ではないけど、若さゆえの好奇心と自信が俺を突き動かした。

初めてのヒッチハイクに少し不安もあったが、九州からスタートしてすぐに思ったよりも親切な人たちに出会えた。特にトラックの運転手のおっちゃんたちは、どこか親しみやすくて、「気をつけて頑張れよ!」と温かい言葉をかけてくれた。彼らは長距離を走っているだけあって、若者が旅をしている姿には何か懐かしい気持ちでも湧くのか、しばしば俺に話しかけてきた。

彼らとの会話は、どれも気楽なものだった。仕事の話や、次に向かう街のこと、時には家族の話まで。ただ乗せてもらっている俺にとっては、その会話が安心感を与えてくれた。そんな旅の中で、いろんな人との出会いが次第に楽しみになってきた。

旅も半ばを過ぎ、俺は静岡付近にいた。その日は東京方面へ向かおうと考え、例の看板を掲げていた。トラックに乗せてもらうことが多かったけど、この日は少し様子が違った。しばらく待っていると、一台の車が俺の前で止まった。運転席には若い女性が座っていた。

「珍しいな」と思った。ヒッチハイクで女性が止まってくれることは滅多にない。少し警戒しつつも、彼女はニコニコと微笑んで「乗る?」と声をかけてくれた。どうやら東京方面に向かう途中だというので、ありがたく乗せてもらうことにした。

彼女は外見こそ普通の若い女性に見えたが、どこか違和感を覚えた。最初は普通の会話だった。旅の話や、ヒッチハイクでの出会いのことなど、軽い話題が続いた。しかし、次第に彼女の質問が妙に個人的なものになってきた。

「お父さんとお母さん、元気?」
「君、どこに住んでるの?」
「子供の頃って、どんなことして遊んでた?」

彼女は、俺の幼少期のことや家族のこと、住んでいる地域のことなど、細かく聞いてきた。最初はただの好奇心だと思って答えていたが、何度も同じような質問を繰り返すので、次第に気味が悪くなってきた。もちろん、彼女は俺を乗せてくれているので、答えないわけにもいかない。だが、普通こんなことまで聞くものなのか?と疑念が湧いてきた。

その後も、俺たちは車内で会話を続けたが、どうも落ち着かない感じだった。彼女の視線が、運転中にも関わらず時々俺をじっと見つめてくるのだ。まるで俺の心の奥底を探ろうとしているかのようだった。居心地が悪くなり、俺は会話をなるべく短く切り上げようとしたが、それでも彼女は一向に質問をやめなかった。

「じゃあ、君は普段どんな人と仲良くしてるの?」
「誰か付き合ってる人はいるの?」
「今まで何人の人に乗せてもらった?」

妙な質問が続く中、目的地の手前で彼女は急に車を止め、「ここで降りてくれる?」と言った。なんだか嫌な予感がしたが、彼女の車から降りると、俺はほっとした。彼女は笑顔で手を振りながら、車を走らせ去っていった。

その後もヒッチハイクの旅は続いた。いろんな人にまた乗せてもらい、無事に北海道までたどり着くことができた。俺は旅を楽しんだが、何度か振り返ってみると、あの女性に乗せられたときに感じた奇妙な感覚が、心に引っかかっていた。

そして、気がついたのは、彼女が去った後のことだった。乗せてもらう車の後ろに、必ずもう一台、何か違和感のある車がついてくることが何度かあった。バックミラーを確認するたびに、彼女の車がちらついていた気がする。最初はただの偶然だと思っていたが、何度も何度も同じような場面を思い出すたびに、背筋が寒くなっていった。

北海道に着いてから数日後、ふとした瞬間に気づいたことがある。俺を拾ってくれたあの車のすぐ後ろに、いつもあの女の人の車がついていた気がする。気がついたのは後になってからだが、彼女は俺のことをずっと追いかけていたのかもしれない。

あれは一体何だったのか。今でも思い出すたびに、答えの出ない疑問が頭をよぎる。そして、もう一度ヒッチハイクをしようとは思えなくなった。