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逃げ切れぬ影

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あかねは、平凡な生活を送るごく普通の女性だった。大学を卒業し、少しずつ社会にも慣れ始め、仕事にも手応えを感じるようになっていた。新しい街での生活にも順応し、気心の知れた友達と過ごす日々に、特に不安や恐れを感じることはなかった。

しかし、ある日、あかねは奇妙な感覚にとらわれた。それは、道を歩いているときのことだった。通りの向こう側で誰かがじっと自分を見ているような気がしたのだ。気のせいかもしれないと、そのときは気に留めなかった。

ところが、その「視線」は次第に明確なものになり始めた。最初に感じたのは、会社の帰り道だった。自分の背後を誰かがつけているかのような、ぞわりとする感覚。振り返っても何も見えないが、気配だけが残るような妙な感じだ。だが、その日はそれだけで終わった。

その後、奇妙なことが立て続けに起こり始めた。最初は、あかねの通勤ルートに必ず同じ時間に現れる見知らぬ男だった。彼は少し離れた場所から、じっとあかねを見つめていた。どこかで見覚えがあるような気がしていたが、はっきりとは思い出せない。

それから数日後、あかねの自宅のポストに、何の前触れもなく手書きの手紙が届いた。内容は「元気ですか?」という短い一言だけで、差出人も名前もなかった。あかねはその文字を見て背筋が凍るような感覚を覚えた。字は子供のように丸みを帯びており、どこか無邪気でありながらも異様だった。しかも、住所を知っているはずがないはずの誰かから届いたものだ。

さらなる奇妙な出来事は、自分の通っているジムで起こった。あかねがトレーニングを終えて更衣室に戻ると、ロッカーの鍵が壊されていた。誰かがこっそりと中を覗いたかのような痕跡があり、しかし何も盗まれていない。その時、隣の中学校に通っていた男の顔が脳裏に浮かんだ。塾で一緒だった男が、自分をじっと見ていたことを思い出したのだ。

「まさか…あの男?」

あかねはその瞬間、彼が自分をつけ回しているのではないかという強い疑念を抱いた。塾で同じだった男、あの無表情でいつもじっと見てきた男。ありえないとは思いながらも、心のどこかでそれが現実なのではないかという恐怖が押し寄せてきた。

あかねは次第に彼の行動がエスカレートしていることに気づき始めた。無言電話が頻繁にかかるようになり、家にいるときも何者かが外から覗いているような視線を感じることが多くなった。そして、あかねの生活は次第に不安に包まれていく。

やがてあかねには彼氏ができた。彼は頼りがいがあり、あかねを支えてくれる優しい人だった。だが、そんな幸せも長くは続かなかった。

ある夜、彼氏が車を運転中に事故に遭った。幸い大事には至らなかったが、車のブレーキケーブルが意図的に切られていたということが分かり、二人は愕然とした。さらに、彼の部屋のドアには無数の爪痕がつけられ、彼の持ち物が荒らされていた。どうやら、彼氏にも嫉妬したその男が行動を起こし始めたのだ。

限界だった。あかねはこれ以上、普通の生活を送ることができないと悟った。彼女は彼氏にも何も告げず、家族や友人にも一切知らせず、ある日突然すべての連絡手段を断ち切った。スマートフォンも解約し、身の回りの荷物だけを持って、知らない土地へと逃げるように引っ越した。

新しい土地では、あかねは一切の連絡を断ち、誰にも自分の居場所を知らせることなく静かに暮らし始めた。
新しい仕事にも就き、寂しいながらも今までのことを忘れて新しい生活を送ろうとしていた。

ただ、最近私が会社に不在のときに限って「田中」と名乗る人物から私宛に電話が頻繁にかかってくるらしい。