花魁のおりょう

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昔々、花魁が華やかに活躍していた時代。吉原の一角に、おりょうという美しい花魁がいた。彼女は若くして多くの客を惹きつけ、その美貌と気品から誰もが一目置く存在だった。

ある日、おりょうのもとに見慣れない男が訪れた。その男は大変な富豪だという噂だった。彼はおりょうをひどく気に入り、毎晩のように店を訪れては大金を投じた。おりょうもその富豪に特別な愛情を抱き、彼のためだけに最上の接客をするようになった。彼との逢瀬を重ねるうちに、彼女は次第に優雅な暮らしを手に入れる。

おりょうは、彼の寵愛を受けることで、贅沢な衣服や美しい装飾品を手にし、他の花魁たちとは一線を画すほどの生活を送るようになった。それまで多くの客に丁寧な接客をしていたおりょうだったが、次第に他の客への態度が横柄になっていった。「あんな小物たちには用はない」と言わんばかりに、彼女は富豪だけを大切にし、他の者には見向きもしなくなったのだ。

おりょうの周りでも「彼女はまるで富豪の妾のようだ」と噂され、店の仲間や他の花魁たちも彼女の態度に不快感を覚え始めた。おりょうはそんなことに気に留めることなく、優雅な生活に陶酔していった。

そして、ある夜、富豪がまた店を訪れた。おりょうは嬉しそうに迎え入れ、いつものように二人きりの時間を楽しんだ。男はいつものように、ぽんと大金を渡し、彼女を喜ばせた。おりょうはその金を懐にしまい、ふと富豪に聞いた。

「いつか一緒にこの街を離れて、遠くで二人きりの生活を送りたいわ。」

すると、男は微笑んでこう答えた。

「おりょう、もう少しの辛抱だ。全てが整ったら、お前を必ず迎えに行く。」

その言葉に、おりょうはますます胸を膨らませた。

次の日の朝、おりょうは目を覚まし、昨晩の大金を確認しようとした。しかし、彼女の目に飛び込んできたのは、信じられない光景だった。金のはずだったものが、全て枯れ葉に変わっていたのだ。

「なんで…!?こんなことが…」

パニックに陥ったおりょうは、昨晩の男の顔を思い浮かべた。何度も会った彼の姿が、次第にぼんやりとしたものに変わり、まるで幻のように曖昧になっていく。

その時、おりょうの脳裏にある話がよぎった。「このあたりには化け狸が出る」という噂だ。狸は人に化け、富をちらつかせては人間を騙し、すべてを奪っていくという。

「まさか、あの男は…狸だったのか…」

おりょうは一気に全てを失った。金も、富豪という夢も、全てが虚像に過ぎなかったのだ。他の客に横柄な態度をとり、仲間たちからも距離を置かれていたおりょうには、もはや頼れる者などいなかった。彼女は自分の欲に溺れ、狸の罠にまんまと引っかかってしまったのだ。

それ以来、おりょうは身を潜めるようにひっそりと暮らすようになったという。