最後のバス
俺が住んでいる山●県の田舎には、ある奇妙なバス路線の話が昔から伝わっている。地元では有名な都市伝説の一つで、特に夜遅くに移動する人たちの間で囁かれているものだ。
それは「●●行き」の路線バス、特に23時台に走る最後のバスに乗ってはいけないという話だ。というのも、この路線バスの最終は22:40発であり、23時台にバスが走るはずがないからだ。
俺も最初は馬鹿げた話だと思っていた。きっと誰かのいたずらで広まった噂だろう、なんて軽く考えていた。だが、友人たちが何度も話すたびに、妙にリアルな感覚が込み上げてくるようになった。
噂では、もし遅れてやってきたバスが現れたとして、何も疑わずに乗ってしまうと、そのバスは●●山の峠を差し掛かる急カーブで曲がりきれず、横転して崖から落ちてしまうらしい。その時点で乗客全員が運命を共にする。だけど、不思議なことに、そのバスはどれだけ探しても見つからない。そして、事故や事件として報道もされない。
さらに奇妙なのは、その23時台のバスに乗ったとき、運転手や乗客は皆普通の様子だという。誰も怪しい素振りはなく、何も変わらない日常のように見える。しかし、地元の人たちはこう語る。
「でも、そのバスに乗っている人たちは、毎回同じメンツなんだよ。」
その意味を考えた時、背筋が凍った。つまり、それは一度そのバスに乗ってしまったら、永遠にその同じ時間、同じメンバーと一緒に閉じ込められてしまうということだ。そして、誰一人としてそのバスから戻って来た者はいないという。だから、実際にその話が真実かどうかも確かめる術がない。
失踪者として報道もされないが、地元では時折、誰かが行方不明になったという話を耳にする。そのたびに、「もしかしてあの23時台のバスに…」と人々は思うらしい。だが、確かなことは誰にもわからない。