雨の中の迎え
今日は家族で久々に外出する予定だった。娘も楽しみにしていたはずだ。しかし、仕事が思った以上に立て込み、俺は残業に追われることになった。「今日は絶対に早く帰る」と約束していたのに、気づけば夜になり、雨が降り始めていた。
「ごめん、帰るのが遅れる」と妻に連絡しようと思ったが、妻からの着信が先に来た。電話に出ると、声が震えている。
「あなた、今どこ?娘が『パパを迎えに行く』って言って、家を飛び出していっちゃったの。帰りが遅いって言うから…まだ帰ってないの。傘も持っていないし…お願い、早く帰ってきて」
その言葉に焦りを感じた俺は、電話も切らずに車に飛び乗り、猛スピードで帰ろうとした。雨脚は強くなり、視界が悪い。妻の言葉が頭の中でぐるぐると回り、心臓がドキドキと音を立てる。
「すぐに帰るから!」と電話で答え、アクセルを強く踏んだ。街灯の少ない田舎道を走りながら、心の中で娘の無事を祈っていた。
そんなとき、道の先に小さな影が見えた。少女が傘も差さず、雨の中を立ちすくんでいる。娘かもしれない。そう思い、車を急停車させた。
窓を少し開けて声をかけた。「どうしたの?迎えに来てくれたの?」しかし、少女は無言でこちらを見つめていた。濡れた髪が顔に張り付き、その目はどこか冷たかった。
「おい、車に乗りなさい!風邪を引くぞ!」俺はドアを開けて呼びかけた。少女はゆっくりと車に乗り込み、後部座席に座った。反応がないまま、俺はそのまま急いで家に向かって再び車を走らせた。
だが、ふと妙な違和感を感じた。娘はいつも元気に話しかけてくるはずだが、後ろの席からは何の声も聞こえない。何かがおかしい。急に不安になり、車を停めて後部座席を振り返った。
誰もいなかった。
「え…?」目を疑った。ついさっき、確かに少女を乗せたはずだった。慌てて車から降り、あたりを探しても、誰もいない。雨の音だけが響いている。
その瞬間、再び携帯が鳴った。妻からだった。震える声でこう言った。
「警察から連絡があったの。娘が…事故に遭ったって…」
足元が崩れるような感覚に襲われた。全身が震え、電話を落としそうになった。娘は…迎えに来てくれたと言っていたのに。あの時、車に乗せた少女は…。
慌てて後部座席を再度確認した。すると、そこには娘の傘が濡れたまま置かれていた。
















