廃ラブホの肝試し
その日は、肝試しをしようということで、俺たち男女4人で地元の有名な廃ラブホに向かった。メンバーは、俺(主人公)、調子に乗っている友達の男・たけし、乗り気な女・みさき、そして怖がっている女・さやか。
この廃ラブホは、地元で有名な都市伝説の場所だ。かつてはにぎわっていたが、経営難で閉鎖されてから何十年も経っている。俺とたけしは何度か肝試しに来たことがあったが、これまでは入り口付近や一階の部屋をちょっと覗く程度だった。しかし、今日は女の子もいるし、たけしはいつも以上に調子に乗っていた。
「今日は二階や三階まで探索しようぜ!」と、たけしが無邪気に提案した。俺も男友達だけだったら同じ提案をしたかもしれないが、さやかの顔を見ると、明らかに嫌そうな表情をしていた。みさきは面白がっているようだったが、さやかはどんどん不安そうになっていった。
その建物は三階建てで、奥に長い構造をしている。廃墟になってからの年月が経っているせいで、壁や天井はボロボロに崩れかけていた。草木が伸び放題で、窓は割れていて、風が吹くたびに異様な音がする。周囲には他の肝試しカップルが来ることもあったが、その日は俺たち以外には誰もいなかった。
まずは一階を探索した。昔のアメニティが少し残っている部屋や、浴衣が置いてある部屋があった。浴衣にはホテル名が刺繍されており、その名残りがどことなく不気味だった。多くの部屋は過去の肝試し客によって荒らされ、ゴミや落書きが散乱している。しかし、どの部屋も静寂が漂っており、妙に不安を煽るような雰囲気があった。
一階を回り終わり、次は二階へ行くことになった。たけしは先頭に立ち、俺たちを引っ張っていく。「行こうぜ、二階も面白いことになってるかもな!」と、軽い口調で階段を上がっていったが、俺は何となく胸騒ぎを感じていた。
二階は一階よりもさらに荒れていた。壁はひび割れ、天井からはコンクリートの破片が落ちている。何かが歩いているような音が時折聞こえるが、風のせいだと自分に言い聞かせた。
二階の探索を終えた頃、たけしが「三階を見ようぜ」と言い出した。しかし、三階への階段は崩れ落ちており、そのままでは上がれそうになかった。俺たちが諦めかけたその時、たけしが「非常階段がある!」と言い出した。建物の裏側には錆びた非常階段がかろうじて残っており、老朽化していて不安定に見えたが、たけしは無邪気に「行こうぜ!」と皆を誘った。
さやかは「嫌だ、怖い」と反対したが、俺とみさきがなんとか説得し、四人で非常階段を登った。階段は錆びつき、足元が軋むたびに金属音が響いた。まるで崩れ落ちるかのような危険な状態だったが、たけしは気にせず先頭を進んでいく。
屋上に到着すると、空は真っ暗で月も雲に隠れ、ほとんど光がなかった。廃墟の屋上は不気味な静寂に包まれており、時間が止まったかのように感じられた。
突然、みさきが「キャー!」と叫んだ。俺たちは驚いて彼女の方を見た。そこには、屋上の縁に揃えて並べられた古びた男女の靴があった。まるで誰かがそこに立って飛び降りたかのように…。
その靴は古めかしいデザインで、明らかに何十年も前のものだった。俺の背筋が凍りつき、たけしも無言で立ち尽くしていた。さやかは震えながら「もう帰ろう…お願いだから帰ろう…」と泣き出していた。
「行こう、今すぐ降りよう!」と俺は叫び、非常階段の方へ走り出した。
その時、突然さやかの様子がおかしくなった。彼女はまるで何かに取りつかれたかのように、ふらふらと歩き出した。意識が朦朧としているようで、俺たちの呼びかけにも応じず、まっすぐに屋上の縁まで歩いて行く。そして、靴を丁寧に揃え、まるで誰かに導かれるように、一気に飛んだ。
「さやか!」と俺は叫び、縁に駆け寄ったが、そこにはもう彼女の姿はなかった。
恐怖で凍りついた俺たちは、何が起きたのか理解することができなかった。















