市民プールの優しいお兄さん
地元の市民プールで、毎年夏休みになると必ず見るお兄さんがいる。彼はスライダーを監視するバイトをしていて、妙に優しいがどこか不気味な印象がある。当たり前だけど、プールで働いているから全身は真っ黒に日焼けしていて、白い歯がやけに目立つ。
最初はただの優しいお兄さんかと思っていたが、近くでよく見ると、目が笑っていないことに気づいた。彼は、都会からわざわざこの田舎のプールにバイトに来ているらしい。なんでも、都会の喧騒から離れてのんびりしたいからだとか。
でも、彼の監視はとにかく厳しかった。特にスライダーのルールにはうるさくて、順番を抜かそうとする子供がいると、すごい剣幕で怒鳴りつける。危険な滑り方をしようとする子供にも、何度も注意をしていた。当たり前といえば当たり前のことだけど、その怒り方は普通のバイトとは少し違う感じがした。
ある日、プールで一緒に遊んでいた友達が、こんな話をしてくれた。
「お兄さん、実は昔このプールで妹を亡くしたらしいよ。だから、毎年夏休みに都会からわざわざここに来てるんだって。」
最初は冗談だと思ったけど、友達の話は意外と真剣だった。詳しく聞いてみると、何年か前、このプールで妹が事故に遭い、溺れて亡くなったという話が地元で広まっていたらしい。
「お兄さん、いまだに妹を探してるって噂があるんだよ」と友達は続けた。「スライダーで滑る子供たちを監視して、妹がそこにいないか確認してるんだって。」
それを聞いた瞬間、背筋が寒くなった。お兄さんの厳しさや、目が笑っていない理由が、急に現実味を帯びてきた気がした。彼は妹の死をずっと引きずっていて、スライダーで楽しむ子供たちを見ながら、亡くなった妹を重ねているのだろうか。
次の日、またプールに行ったとき、俺はなんとなくそのお兄さんの方を見つめてしまった。彼はいつもと同じように子供たちを見守っていたが、ふと目が合った気がした。その瞬間、俺は足がすくんだ。
お兄さんは確かに優しい。でも、その優しさの裏には、妹を探し続ける悲しみと、どこか狂気じみた執着が潜んでいるのかもしれない。
















