昔あった奇人ピエロの話

ヒトコワ,古典怪談,長編怪談サーカス,サーカスの怪談,サーカスの恐怖,サーカス芸人,ピエロ,ピエロの噂,不気味,奇妙なサーカス,子どもの行方不明,怖い話,行方不明,誘拐,都市伝説

俺がまだ小さい頃、母親からサーカスについて奇妙な話を聞かされたことがある。田舎では年に一度、移動サーカスがやってきて、町の子どもたちはみんな楽しみにしていたんだけど、俺の母親はそのサーカスを異常に嫌がっていたんだ。

「サーカスは危ない。子どもたちがさらわれるんだよ。ピエロを見たら絶対に目を合わせちゃダメだ」

母親はそんなことを言い続けていた。それを聞いて、俺も幼心にサーカスに対する不安が芽生えた。サーカスのポスターに描かれたピエロの顔が不気味に感じられ、仲間たちが興奮している中、俺はいつも一歩引いて見ていた。

ところが、どうしても気になってしまうのが子ども心というものだ。ある年、ついに俺はサーカスのテントに足を踏み入れる決心をした。仲間たちと一緒にチケットを買い、ステージに座って見ることになったんだ。

そのサーカスは、今思い返しても何か奇妙なものが漂っていた。普通のサーカスと何も変わらないように見えるけど、何かがおかしい。芸人たちの演技はすごく華やかで、大道芸や空中ブランコ、動物の曲芸も見事だったんだけど、どこか影があった。

「おかしいな…」と思っているうちに、そのサーカスの目玉であるピエロが登場した。彼は大きな白塗りの顔で、赤い髪とやたらと大きな口を持つ男だった。ピエロは子どもたちに風船を配りながら、場内を歩き回る。

そのピエロが近づいてきたとき、俺は何か強烈な不安を覚えた。笑顔のはずの顔が、まるで凍りついたような冷たさを持っていたからだ。ピエロは俺の目の前に来ると、じっと俺の顔を見つめて笑いかけた。

「ほら、目を合わせるな…」

母親の言葉が頭の中で鳴り響いた。俺はなんとか目を逸らそうとしたが、そのピエロの視線から逃げられなかった。

サーカスが終わっても、なんだか不気味な気持ちが残った。ピエロが最後にステージを去る瞬間、彼は俺にウインクをして消えたんだ。それ以来、ピエロの顔が頭から離れなくなった。夜寝ると、夢の中でピエロが俺をじっと見つめている。彼の大きな目が、まるで何かを訴えているかのようだった。

不安になった俺は、サーカスについて色々と調べ始めた。そして、地元の図書館で古い新聞記事を見つけたんだ。それは、サーカスにまつわる奇妙な噂話だった。

数十年前、同じサーカス団が町にやってきた時に、行方不明の子どもがいたという話だった。その子どもはサーカスのピエロに最後に見られたのが目撃されているが、事件は解決されず、そのまま迷宮入りになった。

その記事に添えられたピエロの写真を見た時、俺は背筋が凍った。顔が完全に一致していたんだ。俺が見たピエロと、新聞に載っているピエロがまったく同じ顔だった。

「おかしい、あれから何十年も経っているのに…どうして同じピエロが?」

翌年もサーカスはやってきた。しかし、母親が厳しく止めたため、俺は見に行けなかった。それでも、町の子どもたちから噂を聞いた。その年も、またあのピエロが出てきたという。

「ピエロが笑いかけたんだ」と友達が興奮気味に話す。「お前も見に来れば良かったのに!」

でも、俺はもうあのサーカスに行く勇気なんてなかった。次第に、ピエロのことは忘れていったが、その不気味な笑顔は心に残り続けていた。

そして、ついに決定的な出来事が起こった。数年後、あのピエロがまた町に戻ってきた。サーカスが終わった後、再び町で子どもが行方不明になったというニュースが飛び込んできた。しかも、その子どもは俺がかつて見たピエロに話しかけられた最後の子どもだった。

この事件がきっかけで、町ではサーカスが禁止されることになった。しかし、噂によればそのサーカス団は別の町に移動して活動を続けているらしい。そして、何年も経った今でも、どこかの町でピエロが子どもをさらっているという。

「ピエロはさらわれた子どもたちをサーカスの芸人にしてしまうんだよ」

そう言われているけど、真相はわからない。ただ、俺はもうサーカスに足を踏み入れることはないだろう。


そして、これが最後の警告だ。もし町にサーカスがやってきて、その中にあの奇妙なピエロを見かけたら、絶対に目を合わせるな。ピエロは目が合った子どもを連れて行くんだ。